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ふなばし動物医療センター かつまペットクリニックのスタッフブログ

がんになった子の食事ってどうしたらいいの?      〜2章 栄養について〜

皆さんこんにちは獣医師の緒方です🐾前回は「がん」をもつワンちゃん・ネコちゃんの体の中でどんな事が起きているのか(悪液質)について紹介させて頂きました。

そして、今回は「がん性悪液質」に陥らない為に、どの様な栄養管理が必要かについて紹介させて頂きたいと思います👏

 

 

🍀がん患者の栄養管理🍀

「がん」患者で気をつけないといけない栄養素は主に炭水化物・タンパク質・脂肪です。

まずはこの3つの栄養素と「がん」の関係性について紹介していきたいと思います🙋

 

1、炭水化物とがん患者🍙

「がん』は炭水化物(ブドウ糖や果糖など)が大好物です。「がん」が炭水化物を利用すると乳酸というものが出来上がってしまいます。乳酸は体には不必要なものなので、動物はこの乳酸をエネルギーを使って、ブドウ糖に変化させます。つまり、「がん」が炭水化物を消費すればするほど動物から多くのエネルギーが奪われてしまいます。なので、がん患者の食事中の炭水化物の割合については注意が必要です。

「がん」をもつ動物には、炭水化物の給与は最小限に抑えて、ブドウ糖や乳酸を含む輸液なども推奨されません。

ご飯のイラスト

 

 

2、タンパク質とがん患者🍖

「がん」はタンパク質をほどほどに好みます。「がん」は動物の成長に必要なタンパク質を消費してしまうので、動物の体のタンパク質が欠乏してしまいます。

タンパク質の摂取量が体内での消費量に追いつかなくなってしまうと、免疫機能、消化管機能 そして傷の治癒などに影響を与えてしまいます。

なので、適度な量のタンパク質を与えてあげる必要があります。

ただし、過剰なタンパク質の摂取は「がん」を成長させてしまう可能性があるので注意が必要です💦

また、ある種のアミノ酸は「がん」に対して有効に働くとされています。

アルギニン:「がん」の成長や転移の減少。免疫機能向上、傷の治癒の促進。

グルタミン酸:消化管粘膜の保護、免疫機能の向上、放射線治療の副作用の減少

 

「がん」をもつ動物には良質なアミノ酸を含むタンパク質を適度に摂取させてあげることが重要となります

塊肉のイラスト

 

 

3、脂肪とがん患者🧀

「がん」は脂肪がとても苦手です。なのでがんは脂肪をエネルギー源として利用することが難しいのです。一方、正常な細胞は脂肪をエネルギーとして利用することができます。なので、食事の炭水化物を減量して、主なカロリー源を脂肪に置き換えることで、がん細胞を兵糧攻めにできる可能性があります。

ですが、脂肪を構成する脂肪酸には、がん細胞の成長や転移を抑制する善玉脂肪酸(オメガ3脂肪酸)とがん細胞の成長を促進してしまう悪玉脂肪酸(オメガ6脂肪酸)があるので、脂肪酸の種類にも注意する必要があります。

多くの魚油に含まれるオメガ3脂肪酸は、以下の抗腫瘍効果と抗悪液質効果を示すことが報告されています。

 

①がん細胞の成長と転移を抑制

②動物の免疫増強作用

③動物の悪液質を改善させる

 

しかし、サラダ油などに多く含まれるオメガ6脂肪酸(リノール酸、ガンマリノレン酸)は、腫瘍の成長や転移を促進してしまう可能性が指摘されています。

 

🐟オメガ3脂肪酸(EPA:エイコサペンタエンサン、DHA:ドコサヘキサエンサン)を多く含む食材🐟

・青魚(サバ、イワシ)

・グリーンナッツオイル

・アマニ油

・しそ油

・オメガ3脂肪酸→青魚(サバ、イワシ)、グリーンナッツオイル、アマニ油、しそ油に多く含む鯖のイラスト 亜麻仁油のイラスト

 

 

 

つまり、がん患者の理想的な食事とは??

低炭水化物、過不足のない良質なタンパク質、高脂質の食事

を心がけることが重要です❗️

また、アルギニンやグルタミン酸などのアミノ酸やオメガ3脂肪酸の給与も重要となり、食事やサプリメントで補うことが推奨されます。

以上のことを気をつけることで、動物の栄養改善を目指し、「がん性悪液質」に陥らない様に対策することが大事です。

 

今回は、「がん」を持つ子に対する栄養管理について紹介させて頂きました👍

ただ、栄養管理を気をつけたとしても「がん」を持つ子は状態が悪く、食欲が無い子が多いと思います。

次回は、食欲の無い子に食べてもらう為の工夫について紹介していきたいと思います🙆満腹な犬のイラスト